卵管は卵巣と子宮をつなぐ通り道で、子宮側から4つの部分(間質部・峡部・膨大部・采部)に分けられます。
卵巣から排卵した卵子は卵管の先にある卵管采で拾われて子宮へと運ばれます。一方、子宮から来た精子は卵管を通って卵子のもとへと向かいます。卵管は卵子と精子を運ぶだけでなく、精子と卵子が受精する場も提供し、さらには受精した卵子が着床まで発育する場にもなります。
卵管はこのように妊娠が成立するには無くてはならない器官で、卵管の機能障害は妊娠成立の可否に直接大きな影響を与えます。女性不妊の原因の30~40%は卵管通過障害が原因と考えられています。
卵管通過障害は、完全な閉塞を卵管閉鎖(occlusion)、部分的に通りが狭くなっている卵管狭窄(stenosis)に分類されます。卵管通過障害の多くは、卵管内腔の癒着による閉塞が原因ですが、異物による閉塞や卵管結紮術による人工的閉塞、卵管を圧迫する子宮や卵巣の腫瘍などの病変も原因となります。卵管内腔の閉塞や狭窄は主に腟、子宮から遡って起こる感染が原因となりますが、卵管周囲の癒着は感染以外に内膜症も原因となります。
卵管不妊は原因の頻度が高いにもかかわらず、卵管の構造の特殊性から治療することは困難と考えられてきました。しかし、近年は卵管通過障害に対して卵管鏡下卵管形成術(falloposcopic tuboplasty: FT)が開発され高い治療効果を上げています。
FT法は、卵管通過障害の原因となる癒着などを取り除くことにより卵管の通過性を改善し、自然妊娠を可能にすることを目的としています。技術の修得が必要なため、どこの施設でも行われている治療法ではありませんが、治療効果は高い方法です。FT法は健康保険の適用がなされている治療です。
この治療法に用いられるFTカテーテルシステムと呼ばれる機器の基本的構造は、円筒状の伸長性バルーンカテーテルとその内側に挿入する外径0.6mmのフレキシブルな卵管鏡(falloposcope)から構成され、卵管内の観察と卵管通過障害の治療を同時に行うことができる方法です。侵襲性の低い方法で、安全に操作することができます。
FT治療全体の卵管通過性回復成績は、手術中に通過性回復が得られたものが97%に及びます。再閉塞は約10%あり、この場合は、再度FTによる治療が可能です。
FT治療後の妊娠成績に関して、2年以上経過した症例を集積すると、FT成功例のうち約30%が妊娠に至っています。妊娠が成立するまでの期間は平均7.3カ月で、妊娠症例のうちの87%が1年経過するまでに妊娠を成立させていました。
FTにより卵管通過性が手術中に回復しても、再閉塞する場合があります。また、FTを実施しても通過性を回復できないこともあります。