研究

海外留学

岩橋和裕(平成4年卒)

The Institute for Biogenesis Research, John A Burns School of Medicine, University of Hawaii

 私は、2004年8月より、The Institute for Biogenesis Research, John A Burns School of Medicine, University of Hawaiiに研究留学をしている。ここは、受精・精子に関して世界の第一人者である柳町隆造教授の研究室であり、1998年には、世界ではじめての体細胞クローンマウス(卵丘細胞を用いたためにcumulinaと命名される)が若山照彦博士の手により誕生した場所でもある。元来、不妊症を専門分野とし、卵子における受精プロセスの解明について学位研究を行ってきた自分にとっては、とても魅力のある研究施設であった。今回、関係各位のご協力、およびいろいろなご縁により、本研究室にて山崎由起子博士の指導のもと、マウスクローンおよび生殖細胞に関する研究を開始することができ、とても嬉しく思っている。

 到着早々に、ホノルルで開催されたInternational Society of Differentiationの13th international conferenceに参加する機会を得て、ES cellからoocyte を作製したDr. Hans Scho¨lerや若山博士の講演を直接拝聴し、研究への熱意が増強され、よい刺激を受けることができた。若山博士と話をした際、「ハワイにいた3年間が自分の中で最も幸せな時期でした、なぜなら、ここ柳町研では、一部の実験計画は一任されていて、結果が出ないかもしれないばかげた実験にも、最も時間を費やすことが許された場所だったからです。」と彼は言われた。柳町教授は自らが研究員であったころの経験から、「研究において最も重要なことは、単純かつ本質的な疑問を発することである」ことを学び、子弟たちにもこのことを実践させてこられたのだ。この環境のもと、クローンマウスが誕生したのである。到着間もなく、教授は私を部屋に呼んで、こう仰った。「一日に5分でいいから、頭を真っ白にして考える時間を持ちなさい。往々にして、ばかげた考えから大発見がうまれるのだから。」

 さて、ハワイでの研究生活の特徴としてもう一点忘れてはならないもの、それは、この恵まれた大自然である。青い空、青い海、豊かな緑に囲まれた生活は、心にゆとりをもたらしてくれる。余暇を利用して、大自然を満喫するもよし、大自然に囲まれて、研究に没頭するもよし、ここでは、各個人それぞれのスタイルで生活している。とにかく、あらゆる面で恵まれたこの研究生活を、楽しくかつ充実したものにしてゆきたいと思う
(写真:われわれの研究棟は、University of Hawaii の Manoaキャンパスにある医学部のビルに隣接して作られている)

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