カンファレンス

周産期カンファレンス

周産期医療の話題を中心に関連診療科と月一回カンファレンスを行っております。
医師、看護師、助産師をはじめ興味のある方はどなたでも是非御参加ください。

2016年

2016.7 / 右肺無形成、高度気管狭窄、食道閉鎖を合併した新生児死亡症例の検討

日 時 2016年7月11日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 産科 秋葉洋平先生、小児科 松崎陽平先生、小児外科 下島直樹先生

2016.6 / GBS感染症の動向と周産期感染予防の問題点について

日 時 2016年6月27日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 感染制御センター 岩田 敏先生

2016.5 / 腸内細菌(microbiome)

日 時 2016年5月23日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 腎臓内分泌代謝内科 入江潤一郎先生

2016.4 / 早産児の発達を促す保育環境の最適化~光環境~

日 時 2016年4月25日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 国立精神・神経医療研究センター 太田英伸先生

2016.3 / 薬剤部による妊婦・授乳婦のお薬相談

日 時 2016年3月28日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 薬剤部 小谷宙先生

2016.2 / 当院における先天性横隔膜ヘルニア周産期管理例を振り返って

日 時 2016年2月22日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 下島直樹先生(小児外科)

2016.1 / 周産期臨床統計2015年

日 時 2016年1月18日(月)
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 大谷利光(産婦人科)、松崎陽平(小児科)、清水隆弘(小児外科)
要 旨 2015年の周産期臨床の振り返りを行いました。まず、産科については、2015年の総分娩数は616件(うち双胎27件)、前年と比較して18件増加しました。総分娩数は増加しましたが、病床数の関係もあり母体搬送の受け入れは41件、昨年と比較し15件減少しました。帝王切開術は289件(46% )、特に帝王切開術施行決定から可及的速やかな娩出を要する超緊急帝王切開術は8件であり、主な適応は常位胎盤早期剥離および胎児機能不全でした。母体年齢36歳以上の高齢出産の割合は約53%であり、年々増加傾向にあります。胎児外来への紹介患者は108名、このうち当院では36例の周産期管理を行いました。
次に松崎先生より新生児病棟の臨床統計を報告していただきました。2015年の一年間に新生児病棟(NICU 9床、GCU 18床)には計744名が管理入院となり、前年と比較して70名増加しました。このうち、NICU入院数は209名(前年+32名)であり、1500g未満は28名、1000g未満は8名でした。新生児搬送受け入れ数は103名(前年+45名)人工呼吸器管理を要した症例は104例(気管内挿管症例61例 DPAP43例)でした。心臓外科領域では動脈管閉鎖術および肺動脈絞扼術を中心に8例、小児外科領域では7例の手術を新生児期に行いました。
最後に清水先生からは小児外科における新生児手術統計の発表をしていただきました。新生児手術症例は低位鎖肛や十二指腸閉鎖をはじめ計12例でした(院外出生例含む)。特に、胎児期から周産期管理を行った先天性胆管拡張症の手術症例について、生後超音波像や術中写真等を交えながらお話いただきました。
産科病棟ベッド数がlimiting factorとなり母体搬送受け入れ率は低下してしまいましたが、分娩件数や新生児搬送受け入れ数は徐々に増加しております。
2016年も産科・小児科・小児外科の連携を密にし、質の高い周産期診療を提供していきたいと思います。
(文責:大谷利光・宮越敬)



2015年

2015.12 / 1号棟4階における授乳支援向上に向けた取り組み

日 時 2015年12月28日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 1号棟4階 ○佐々木 早乙女 塩月 栗原
要 旨 1号棟4階(産科病棟)看護スタッフ(助産師・看護師)は、母親の希望する授乳方法に従って授乳に自信を持って取り組むができるように、日々支援を行っている。母乳栄養を実施していきたいという母親のニーズに対応するために、これまでの授乳支援の方法を見直しし、新たな取り組みを開始した。
病棟の授乳に関することの窓口として「授乳支援班」を設立した。そして、看護スタッフの知識や技術向上のための学習会の開催や、授乳方法の希望を母親全員に聴取することを実施した。また、児への授乳開始以前に行う指導内容を見直しし、産褥早期に授乳開始が困難な早産児出産の母親に対しては、産褥早期から乳頭刺激を開始することとした。
結果としては、1号棟4階看護スタッフが、乳房管理や授乳に関する知識や技術の向上を図ることができ、入院中の母親の継続した授乳支援を行うことができるようになったと言える。実際には、母親の強い乳房緊満の生じることが減少したこと、母乳分泌量が増加したことがある。
今後の課題は、以下の2点である。
  1. 授乳に関する母親の様々なニーズに対応して適切な支援を行うための、更なる知識や技術の向上
  2. 1号棟5階看護スタッフ、産科医師、新生児科医師の協働による効果的な母児の支援
発表内容
  1. 当院の現状
  2. 1号棟4階の授乳支援内容
  3. 授乳支援に関して見直しを行った内容
    1)授乳支援班の設立
    2)乳房管理と授乳行動を中心とした指導への移行
    3)早産児出生の母親への母乳分泌促進の支援
    4)母児のニーズに対応した取り組み
  4. 結果
  5. 課題

2015.6 / 最近4年間の先天性心疾患(胎内診断例)の検討

日 時 2015年6月20日
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 小柳喬幸先生(小児科)
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは、最近4年間の先天性心疾患(胎内診断例)の検討と題して、小児科の小柳喬幸先生にご講演いただきました。
まず、当院で胎内診断した先天性心疾患の内訳とその転帰、続いて当院での先天性心疾患の新生児診療体制についてお話しいただきました。
2011年から2014年までの4年間の院内出生児は2285名でした。そのうち先天性心疾患と胎内診断され当院で出生した児は45名(1.9%)でした。
45例の内訳は、男児22名、女児23名、平均出生週数は妊娠36週、平均出生体重は2344gでした。妊娠37週未満の早産児は16名(36%)、出生体重が2500g未満であった児は28名(62%)、体外受精胚移植により出生した児は10名(22%)でした。先天性心疾患と胎内診断された児は全例で先天性心疾患と出生後診断されています。疾患名の合致率は95%に当たる43例であり、高い正診率でした。
出生45例の内訳は生存が34名(76%)、死亡が11名(24%)でした。他施設では生存率38.9~70%との報告があり、同等の結果でした。手術を施行した症例は45例中38例(84%)でした。うち29例(77%)は生存、9例(23%)は死亡の転帰でした。手術関連死亡(術後30日以内の死亡)は3例(7.8%)に認められました。出生体重別の検討では、出生体重は予後を左右する一因である可能性が示唆されました。
疾患別の内訳は、心室中隔欠損症が9例、単心室症が7例、房室中隔欠損症が7例、両大血管右室起始症が6例、大動脈弓離断症が3例、不整脈が3例、その他9例でした。不整脈の3例を除き、チアノーゼ型が24例、非チアノーゼ型が18例でした。また、22例(49%)に染色体異常や無脾症候群、CHARGE症候群やVATER症候群といった奇形症候群を合併していました。
死亡の転帰を辿った11例の疾患名は、両大血管右室起始症、単心室症、大動脈弓離断症、房室中隔欠損症、ファロー四徴症などであり、複雑な心内構造異常を伴うものが中心でした。また、11例中7例に染色体異常や無脾症候群を合併していたことも予後に影響したと考えられました。
当院では、先天性心疾患と胎内診断された場合、妊娠中から産科・新生児科・小児心臓班・心臓血管外科・小児外科・麻酔科などの関連診療科で情報を共有し、赤ちゃんとご両親をサポートしています。胎内診断を共有することで、計画分娩や分娩時の環境を整えることができ、新生児死亡の減少に繋がります。また、胎内診断された場合には、小児心臓班の医師からご両親に出生前に病状説明や出生後の治療方針をご説明する機会を設けています。出生前からこのような機会を設けることで、ご両親の不安軽減や治療施設の選択が可能になると考えています。ご両親の複雑な感情の受け入れのための体制作りも行っています。
当院の特色の一つに、総合診療を必要とする複合疾患患者を得意とすることが挙げられます。今後も、関連診療科と連携しながら治療成績の向上に努めていきます。また、出生前から新生児期、小児期にわたり継続性のある家族サポート体制を作っていきたいと考えています。
今回は当院の先天性心疾患の検討について、貴重なお話をいただきました。より良い診療を実現させるために関連診療科で協力していくことを再確認しました。
(文責:福武麻里絵)

2015.4 / 当院での2014年の新生児聴覚スクリーニング検査の報告

日 時 2015年4月13日
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 超音波検査室 堀検査士
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは、当院での2014年の新生児聴覚スクリーニング検査の報告と題して、耳鼻咽喉科聴力検査室の堀明美さんにご講演頂きました。
難聴の頻度は1000人に1人程度といわれています。1970年に聴性脳幹反応(ABR : Auditory Brainstem Response)が発見され新生児の難聴を正確に判定できるようになりました。さらに1997年には簡便で信頼性の高い検査法であるAABR(Automated Auditory Brainstem Response)が開発されました。これは防音室や催眠鎮静剤は不要で、自然睡眠下または安静時に実施可能であり、検査時間も約10分と短く、感度は99.96%と言われています。
当院における新生児聴覚スクリーニングは、生後数日以内に自動聴性脳幹反応(AABR:Auto Auditory Brain Response)を行い、難聴児を早期診断し、聴覚精査および療育につなげることを目的としています。2013年まではハイリスク症例に対してのみ検査を施行してきましたが、2014年からは両親から希望があった正期産児に対しても、AABR検査を実施しています。初回AABRにてrefer(要再検)となった児に対しては入院中に2回目のAABRを施行し、更にreferとなった児をrefer確定としています。授乳直後の睡眠下で検査を行うよう工夫することで覚醒による体動を減少させ、refer検出の偽陽性率を低下させました。
言語獲得に重要な時期は生後6ヶ月~2歳であるとされており、新生児聴覚スクリーニングの考え方に、『1-3-6 ルール』というものがあります。具体的には、生後1ヶ月までにすべての児が新生児聴覚スクリーニング(AABR)を終えている、生後3ヶ月までに精密検査(聴性定常反応検査:ASSR:auditory brainetem response)が開始される、生後6ヶ月までに2回目のASSRを施行し、難聴と診断された児に対しては必要な療育が開始される、というものです。当院ではこのルールに基づき、早期介入に努めています。
当院では2014年は全出生児の87%にあたる456名の児に対して検査が行われました。検査について広く啓蒙することでこのような高受診率を得ることができました。偽陽性率は0名、一側性難聴は1/456名(0.2%)、両側性難聴0名でした。一般的に、AABRの偽陽性率は2%とされているため、良好な成績であったと思われます。
新生児聴力スクリーニングは、その時点において言語発達に影響を与えるような難聴が否定的であるということを示す検査です。両親に結果を説明する際には、その後の育児のなかで難聴を疑うような症状があった場合には小児科の医師にご相談いただくように説明しておくことも重要と考えられます。
当院でも新生児聴覚スクリーニングを広く行うことで、より早く的確に医療介入を行えるように耳鼻咽喉科、小児科、小児外科、産科などの関連診療科で協力をしていくことが重要であることを再確認しました。
(文責:福武麻里絵)

2015.3 / 当院での22-23週児の予後

日 時 2015年3月23日
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 小児科 松崎先生
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは小児科の松崎陽平先生からお話をいただきました。
超早産児では、呼吸窮迫症候群(RDS)、壊死性腸炎(NEC)、動脈管開存症(PDA)、脳室内出血(IVH)、慢性肺疾患(CLD)、未熟児網膜症(ROP)、運動発達遅延、精神発達遅延などのリスクを考慮する必要があります。今回、2006年以降に当院で経験した22-23週での出生児の疾患罹患率や予後について検討しました。死亡率は、22週では25%(2/8例)、23週では18%(3/17例)であり、22-23週全体では20%(5/25例)という結果でした。死因としては敗血症やNECなどが挙げられました。80%が生存退院しており、他施設の22%(22週)、55%(23週)と比較し良好は成績でした。NECの発症率は、22週では14.3%(1/7例)、23週では16.7%(3/18例)という結果でした。それぞれ1例ずつ死亡例があり、22-23週全体では20%に腸管穿孔が起きていました。PDAについては、22週では71.4%(5/7例)でインドメタシンを使用しました。2例は自然閉鎖を認めました。23週では61.1%(11/18例)でインドメタシンを使用し、16.7%(3/18例)で外科的結紮術を要しました。2例は自然閉鎖しています。22-23週全体では、76%にインドメタシンを使用し、12%に外科的結紮術を施行していました。一方、20%で動脈管の自然閉鎖を認めました。IVHの発症率は、22週では57.1%(4/7例)でした。このうち28.6%(2例)でⅢ度以上の重篤な出血を認めました。23週では38.9%(7/18例)、うちⅢ度以上の出血は5.6%(1例)という結果でした。22-23週全体では44%にIVHを認め、12%にⅢ度以上の出血を認めました。他施設では、26%(22週)、15%(23週)にⅢ度以上の出血があったとの報告もあることから同等の結果であったと考えられました。CLDの発症率は、22週では100%(6/6例)でした。在宅酸素を必要とした症例は2例でした。23週では94.1%(16/17例)でCLDと診断されました。在宅酸素に移行した症例は5例ありました。22-23週全体では、95.6%が36週の時点で酸素投与を必要とし、30%の症例で在宅酸素へ移行しました。ROPについては、22週の83%でレーザー治療を必要とし、うち1例では硝子体手術を行いました。23週では64.7%(11/17例)でレーザー治療を、1例で硝子体手術を施行しました。22-23週全体では69.6%でレーザー治療を行い、8.7%で硝子体手術を施行したことになります。他施設ではレーザー治療が65%、硝子体手術は0%であったとの報告がありました。運動発達についてですが、22週では66.7%(2/3例)に、23週では45.5%(5/11例)に発達遅延を認めました。22-23週全体では50%の症例で運動発達遅延を認めました。精神発達については、22週では33.3%(1/3例)に、23週では45.5%(5/11例)に発達遅延を認めました。22-23週全体としては42%に精神発達遅延を認めました。成長についてですが、2歳以降の児に関しては22週の33.3%(1/3例)、23週の50%(4/8例)で身長が3%tile以下という結果でした。22-23週全体としては2歳以降の45.4%に3%tile以下の低身長を認めました。
今回、22-23週で出生した児に関する貴重な報告をしていただきました。当院では、それぞれのリスクを軽減させるための取り組みを行っています。RDS予防目的のサーファクタントのより早期投与、NEC予防のためのビフィズス菌・母乳早期投与、IVH予防のためのより早期のインドメタシン開始、腸管穿孔リスク軽減のためCLDに対するステロイド慎重投与、ROP予防のため酸素慎重投与などがその例です。
今後、超早産児は増加傾向をたどることが予想されます。特に運動・精神発達に関しては、短期的な問題だけでなく長期予後に関わる課題も抱えているため、症例の蓄積と共に継続的な長期フォローが重要と考えられます。
(文責:福武麻里絵)

2015.2 / 超低出生体重児における動脈管開存症手術症例のまとめ

日 時 2015年2月23日
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 小児科 金先生
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは、超低出生体重児における動脈管開存症手術症例のまとめと題して、小児科の金隆根先生よりお話をいただきました。
動脈管は大動脈と肺動脈を繋ぐ血管です。胎児期には肺に流れる血流が少ないため、動脈管を通して大動脈に血液が流れることで胎盤への血流を保っています。動脈管は出生後数日の間に閉鎖しますが、早産児の場合には閉鎖しないことがあります。動脈管が開存していると大動脈から肺動脈に血液が流れ、肺血流が多くなりすぎ呼吸不全や心不全を引き起こす恐れがあります。また、大動脈への血流が減少することにより腎臓や肝臓、腸管への血流が減少し腎不全、壊死性腸炎などを引き起こすこともあります。
動脈管を開存させる(平滑筋を弛緩させる)因子としてはプロスタグランジンE2や(PGE2)や一酸化窒素(NO)があり、一方閉鎖させる(平滑筋を収縮させる)因子としては酸素(O2)が挙げられます。通常、出生後にはPGE2を産生する胎盤が消失することやPGE2が肺で代謝されること、更には酸素分圧の高い血液が動脈管を通ることで出生後数日以内に(機能的に)閉鎖します。
早産児は正期産児と比較し、PGE2が代謝されにくいこと、動脈管の酸素への反応性が低く収縮が弱いことから機能的な閉鎖が起こりにくいという特徴があります。また器質的な閉鎖に至らず再開通しやすいことから、30週未満で出生した早産児の65%は治療を必要としたとの報告もあります。症状としては肺血流増加による肺うっ血や肺出血、体血流低下による腎不全や壊死性腸炎が挙げられます。心拍上昇、心雑音聴取、拡張期血圧低下などに注意が必要です。治療には薬物療法と外科的結紮があります。薬物療法としてのインドメタシン(COX阻害薬)はPG合成を阻害することで動脈管を閉鎖させる作用を持ちます。当院では24時間間隔で3回投与を1クールとし、閉鎖が確認されるまで2-3クール投与を行っています。有害事象は、腎障害、消化管穿孔、血小板機能低下などが挙げられます。依然として開存している場合には外科的結紮を行います。当院ではNICUでも手術可能であるため、病状により外科的結紮の時期を選択することが可能です。
当院で2006年以降に施行された超低出生体重児の手術症例は15例でした。当院で管理を行った超低出生体重児のうち10%(15例/153例)に当たります。症例の分布は、出生週数は23-28週(中央値25週)、出生体重は400-900g(中央値600g)、外科的結紮術の施行日の中央値は出生後2日でした。外科的結紮術を施行するまでの経過としては、インドメタシン投与を完遂した後に手術を施行した症例が7例、有害事象により完遂できず手術を選択した症例が7例、すぐに手術を施行した症例が1例ありました。当院では手術へ移行する至適時期などについても検討を行っています。手術成績は良好であり、児に認められた合併症としては、慢性肺疾患15例(うちHOT導入2例)、未熟児網膜症に対するレーザー治療12例、壊死性腸炎3例、脳室内出血3例などと続き、超低出生体重に伴うものでした。
今回は、超低出生体重児の動脈管開存症について貴重なお話をいただきました。症例の蓄積をしていくと共に、今後も関連診療科で連携を取っていくことが重要であると考えられました。
(文責:福武麻里絵)



2014年

2014.12 / バースプランについて

日 時 2014年12月22日
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 1号棟4階 助産師 (遠藤、鈴木、坂本、照井)
要 旨 1号棟4会産科病棟、助産師は、妊婦やその家族が自己の妊娠、分娩、育児に対して具体的に考えることができるように支援することが必要であると考えています。また、妊産婦と助産師が一緒にバースプランを考えながら信頼関係を築くこと、その分娩や育児に携わる1号棟5階の看護師助産師、または、産科医師や小児科医師がそのバースプランの内容を共有して対象者を支援することが重要であると考えます。
今回、バースプランについて、9月1ヶ月間、出産を目的にして入院した妊産婦32人に聴き取りを行いました。この結果、妊産婦自身が、分娩や育児に関するニーズを明確にすることができていない現状や、現在、当院で実施されている分娩や育児に関する内容が理解されていない現状も明確になりました。
実際に、産婦のバースプランに対応したケアを実践すると、妊産褥婦自身が分娩や育児に対する希望や目標を明確にし、主体的に取り組む姿勢が見られました。そして、バースプランの実現に向けて助産師と一緒に取り組む過程が、対象者の分娩体験や入院生活への満足度を向上することに繋がっていることを再認識することができました。しかし、今後の課題も見えてきました。その内容を、周産期カンファレンス参加の皆様と共有し、これからも、私達助産師は、妊産褥婦に対して適切なケアを提供していきたいと考えます。
内容
  1. バースプラン導入の経緯
  2. バースプランの調査について
    1)経腟分娩の場合
    2)腹式帝王切開の場合
  3. 1号棟4階に移動してからの母児同室の実施状況
  4. バースプランの実践内容
  5. 今後の課題
(文責:菊地)

2014.10 / 当院における口唇・口蓋裂治療の現状について

日 時 2014年10月27日
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 形成外科 岡部圭介先生
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは、口唇・口蓋裂について形成外科の岡部圭介先生にご講演頂きました。口唇・口蓋裂は1/500人の頻度で発生する多因子遺伝疾患です。発生段階で胎生4~7週に一次口蓋、7~12週に二次口蓋が形成されますが、口唇・口蓋裂は一次・二次口蓋の癒合不全により起こるとされております。形態としては(1)口唇裂、(2)口蓋裂、(3)顎裂があり、さらにそれぞれ完全と不全、片側と両側などに分類されます。通常、第1児が口唇・口蓋裂であっても第2児が口唇・口蓋裂になる確率は数%です。
口唇・口蓋裂の治療にあたっては、整容性および吸啜・嚥下・発語などの機能に留意する必要があります。治療時期について、まず口唇裂・鼻形成術は、安静が保たれ術後治癒しやすい生後2ヶ月に施行されます。続いて発声・発音への影響を考え、1歳前後に口蓋裂形成術を行います。顎裂では骨移植が必要となることが多く、歯列形成を考慮して8~11歳が至適施行時期となります。各手術に加え、術後の創部非対称性を修正する手術が必要となることがあります。
今回は、口唇・口蓋裂の概要から当院での治療に至るまで貴重なお話をいただきました。口唇・口蓋裂の治療は、機能障害による成長・発達障害のみならず整容面での心理的な問題の解決にも寄与することを再認識しました。(文責 蛭田健夫)

2014.9 / Dural sinus Malformation(硬膜静脈洞奇形)について

日 時 2014年9月22日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 脳神経外科 三輪点先生
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは、脳神経外科の三輪点先生にDural sinus Malformation(硬膜静脈洞奇形:DSM)についてご講演いただきました。
症例:妊娠26週時に超音波にて胎児頭蓋内腫瘤を指摘され、精査目的で当院胎児外来初診となりました。超音波およびMRIにてDSMおよび顔面リンパ管腫が疑われ、脳外科および小児科と連携して経過観察となりました。経過中に病変に著変なく、妊娠37週時に選択的帝王切開にて男児分娩に至りました。眼瞼周囲には血管腫を認め、画像検査では血栓を伴うDSMと診断されました。その後、血栓の消失を認めましたが、新たな硬膜動静脈シャントの出現が確認されました。現在はカテーテル塞栓治療などの可能性も視野に入れながら循環動態の変化などについて慎重に経過をみています。
DSMは頭蓋内静脈奇形の1.9%と稀な疾患です。横静脈洞の拡張が進行および残存する病態で、動静脈瘻を伴うものと伴わないタイプがあります。診断にはカラードプラが有用です。DSM内の血流が遅いため、内部に血栓化を伴うことが多いとされておりますが、正常脳静脈の還流路として機能することもあります。70%以上の場合で予後良好ですが、シャントの進行が速い場合などは予後不良と報告されております。出生後の症状増悪の要因として、High-flow shuntにより心拍出量が増加し、さらに全身血管抵抗が低下することより、右心負荷・肺動脈圧が増加し、結果として心不全を来すことが挙げられます。DSMは他の小児動静脈シャント疾患と同様に発症時期に応じて、心不全、腎不全、呼吸不全、水頭症、巨頭症などを呈します。血栓の融解に伴う新たな硬膜下動静脈瘻の出現や心不全、水頭症に伴う頭囲の拡大に注意しながら慎重な経過観察が必要です。症状出現時、進行時には血流を低下させる経動脈的塞栓術や経静脈的塞栓術による治療が行われます。
今回のカンファレンスでは、DSMという稀な病態を学ぶことができました。DSMの管理においては、産科による胎児診断、適切な分娩方法の選択、小児科・小児外科による出生直後の周術期管理、脳外科による治療適応の判断など、集学的治療が不可欠です。今後も、各診療科間においてカンファレンスなどでコミュニケーションをとり、密に連携して治療にあたることが大切であると考えられました。
(文責:樋口敦彦)

2014.6 / 当科における先天性食道閉鎖症例の検討

日 時 2014年6月30日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 小児外科 加藤源俊先生
要 旨 今回の周産期カンファレンスでは、当科における先天性食道閉鎖症例の検討と題して小児外科の加藤源俊先生よりお話をいただきました。
新生児期に小児外科手術を要する疾患頻度としては、直腸肛門奇形、腸閉鎖、肥厚性幽門狭窄症、横隔膜ヘルニア、そして食道閉鎖と続きます。先天性食道閉鎖症は比較的よく遭遇する疾患のひとつです。
先天性食道閉鎖症の病型分類にはGross分類が用いられます。下側の食道と気管が瘻孔でつながっているC型の頻度が最も高く、85%を占めます。胎内所見としては羊水過多、胃泡の不明瞭などが挙げられ、出生後の診断には経鼻胃管のcoil up sign、泡沫状唾液などが有用です。典型的な胎内所見が認められる症例は限定的であり、胎内診断率は43%にとどまります。また、先天性食道閉鎖症の50-65%に先天性心奇形といった何らかの合併奇形を伴うことが知られており、合併奇形も含めた治療が必要となります。新生児予後のリスク分類として、Waterstonのリスク分類(1962年)では出生体重、合併奇形、肺合併症が予後を左右するとされています。またSpitzの分類(1996年)では出生体重、重症心奇形の有無が重要とされています。Spitz分類のGroupⅠの先天性食道閉鎖症の生存率は96%程度と報告されています。
先天性食道閉鎖症の治療は手術療法であり、食道吻合術が行われます。Gross分類の病型や、上下の食道の離れ具合によっては食道の延長術(Howard法、Foker法)が必要になることもあります。当院で施行された先天性食道閉鎖症手術の術中手術映像を供覧していただき、手術の流れについて解説いただきました。
最近5年間での当院での先天性食道閉鎖症手術例は14例です。先天性食道閉鎖症では、頻回の吸引や状態観察が重要であり、看護スタッフによるケアが非常に重要です。早期合併症としては食道縫合部の縫合不全、縦隔炎、晩期合併症として胃食道逆流、吻合部狭窄、気管軟化症などが挙げられます。当院の成績は14例中2例に縫合不全が認められ、既知の頻度と同程度でした。術後も、嚥下機能、呼吸器感染症、栄養状態などに注意を払い、長期的に経過をみていく必要があります。
今回は、先天性食道閉鎖症の概要から当院での治療戦略に至るまで、貴重なお話をいただきました。周産期管理を円滑に行うためには、産科・新生児科・小児外科との円滑な連携が重要であり、また新生児の看護に関わるスタッフの協力が不可欠であることが再認識されました。
(文責:福武麻里絵)

2014.4 / 1号棟5階における長期入院患児への母乳育児支援

日 時 2014年4月28日(月)17:00~18:00
場 所 2号館11階カンファレンスルーム
講 師 1号棟5階 助産師・看護師(佐々木亜妃、石井裕子)
要 旨 昨年度、GCUチームで長期入院患児の母乳育児支援に取り組み、児の出生から退院まで継続した母乳育児支援を実践する体制が整ってきた。超低出生体重児の場合、生後4~5ヶ月間の入院を要する。この間、母は直接母乳ができない状況で母乳分泌を維持し、児は成長発達の段階や全身状態に応じて哺乳行動を獲得していく必要があり、個別的かつ継続的な母乳育児支援が求められる。NICUでは平成23年度から「NICU母乳ケアプラン」を運用し、早期からの母乳栄養開始と家族ケアの推進を目指して母乳育児支援を行っている。1号棟4階と1号棟5階の連携を強化すると共に、1号棟5階でできることを模索しながら、より早期からの母乳栄養開始を目指している。GCUでは母と定期的に話し合いながら、母の母乳育児への思いに寄り添い、退院に向けた目標を達成できるように支援をしている。長期間に及ぶ母乳育児支援においては、母乳分泌不足や乳管閉塞、乳腺炎の発症など、1号棟5階だけでは対応が困難な事例もあり、産科の医師、助産師、地域の社会資源を活用しながら対応している。今後の課題は、現在1号棟5階で行っている母乳育児支援を定着させて母乳育児支援能力を向上すること、早産の母児に対してより早期からの母乳栄養開始を目指すことである。また、長期的には周産期成育クラスターとしての母乳育児支援体制を構築することが課題である。早産児に限らず母乳栄養には多くの利点があり、小児科・産科、医師・助産師・看護師の連携を深めながら当院の母乳育児支援を推進していきたい。
(文責:佐々木亜妃)

2014.3 / 新生児聴覚スクリーニングについて

日 時 平成24年3月25日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 大石直樹先生(耳鼻咽喉科)
要 旨 今回は新生児聴覚スクリーニングについて、耳鼻咽喉科の大石先生にご講演頂きました。新生児聴覚スクリーニングは、生後数日以内に自動聴性脳幹反応(AABR)を行って難聴児をスクリーニングし、聴覚精査および聴覚学習のための適切な療育につなげることを目的としています。
難聴の頻度は1000人に1~2人といわれています。1970年に聴性脳幹反応(ABR : Auditory Brainstem Response)が発見され新生児の難聴を正確に判定できるようになりました。さらに1997年には簡便で信頼性の高い検査法である自動ABR(Auto Auditory Brain Response)が開発されました。これは防音室や催眠鎮静剤は不要で、自然睡眠下または安静時に実施可能であり、検査時間も約10分と短く、感度は99.96%といわれています。
言語獲得に重要な時期は生後6ヶ月~2歳であるとされていますが、以前は1~3歳で初めて難聴と診断されることが多く、新生児聴覚スクリーニングを導入することで早期診断、早期治療が可能となりました。現在、デジタル補聴器や人工内耳を用いた治療法の進歩により、難聴の治療が可能となっています。具体的には新生児期に難聴を診断し生後6ヶ月までに治療を開始することによって、3歳時には正常児の90%の言語力を身につけると報告されています。
当院でも新生児聴覚スクリーニングが導入され、現在、希望者または難聴ハイリスク児に対して施行しています。今後、耳鼻科、小児科、産科で連携をとりながら適応の拡大について検討していくことを確認しました。
(文責:池ノ上 学)

2014.2 / 母児同室の現状と今後の課題について

日 時 2014年2月24日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階ラウンジ
講 師 1号棟4階 助産師(植松、藤田、早乙女、森、宮脇)
要 旨 昨年9月に1号棟4階に移動し、11月から母児同室を再開した。
これまでの母児同室時間は、8時45分~14時45分(平日)であった。しかし、褥婦からは、「夜間も母児同室を行いたい」という声が多数聞かれている。また、助産師は、授乳や乳房ケア、新生児の育児に対するアドバイスを実施する時間を増やし、看護ケアを向上させるための方法として母児同室の時間延長を考えてきた。今回は、安全を保持して母児同室の時間を延長するための取り組みや工夫の内容を発表すると共に、消灯時間(21時)まで母児同室時間を延長することを提案した。そして、新生児医師や1号棟5階の看護師から、母児同室の時間延長に関する様々な意見をいただくことができた。
今後は、時間を延長した状態においても安全に母児同室を実施していくために、助産師が新生児の観察方法等を研修することや、1号棟4階と1号棟5階の看護スタッフ同士がより協力体制を強化していきたいと考える。
  1. 当院における母児同室の方法と条件
    ・感染防止の視点により、面会時間以外の日勤帯で実施
  2. 当院における母児同室の歴史
    ・当院では、2000年3月から実施
  3. 1号棟4階に移動してからの母児同室の実施状況
  4. 母児同室の時間延長に取り組むことになった動機
  5. 母児同室の時間延長に向けての準備
    1)新生児の管理
    2)感染防止対策
    3)安全性・緊急時の対応
  6. 安全に母児同室を実施するための課題
(文責:菊地)

2014.1 / 2013年周産期臨床統計

日 時 2014年1月27日(月)17:00~18:00
場 所 臨床研究棟1階カンファレンスルーム
講 師 池ノ上学先生(産科)・松崎先生(新生児科)・富田先生(小児外科)
要 旨 2014年を迎え、毎年恒例となりました前年の周産期臨床統計についてカンファレンスを行いました。
まずは産科領域ですが、2013年の総分娩数は502件(うち双胎19件、品胎1件)であり、前年と比較して33件減少しました。総分娩数は減少した一方で、母体搬送の受け入れは62件と昨年と比較し28件増加しました。帝王切開術は248件で、総分娩数に占める割合は約49%でした。特に、帝王切開術施行決定から可及的速やかな娩出を要する超緊急帝王切開術は11件であり、主な適応は常位胎盤早期剥離および胎児機能不全でした。卵子提供後妊娠は8件であり、母体年齢36歳以上の高齢出産の割合は約47%でした。胎児ハイリスク外来への紹介患者は84名で、そのうち51例について周産期管理を行いました。
次に松崎先生より新生児科の統計を報告していただきました。新生児病棟(NICU 9床、GCU 18床)には計579名が管理入院となり、前年と比較して84名減少しました。これは9月に行われた病棟移転に伴う入院制限が大きな要因となっています。このうち、NICU入院患者数は162名(前年比 -11名)、1500g未満は42名(前年比 +3名)、1000g未満は23名(前年比 +5名)でした。合併奇形を伴う症例も多く、先天性心奇形は16名、形成外科疾患は8名、小児外科疾患は12名でした。
最後に富田先生から小児外科における新生児手術統計の発表をしていただきました。新生児手術症例は22例で昨年に引き続き増加傾向にあり、いくつかの手術症例について術中写真を交えながら発表していただきました。具体的には、壊死性腸炎、腹壁破裂、総排泄腔症、VACTERL連合(食道閉鎖、鎖肛)、胎便栓症候群、小腸捻転などでした。
昨年に引き続き分娩数は減少しており、分娩数回復に向けて母体搬送の積極的受け入れや産痛緩和、医療連携の促進などの取り組みを行っています。引き続き産科・小児科・小児外科の連携を密にし、周産期医療を活性化させていくことを確認しました。
(文責:池ノ上)



2013年以前

過去の周産期カンファレンス(PDF)




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