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2018(平成30)年

2018.8.8

升田博隆君(76期)が第36回日本受精着床学会総会・学術講演会において世界体外受精会議記念賞を受賞

升田博隆君(76期)が第36回日本受精着床学会総会・学術講演会において世界体外受精会議記念賞を受賞  升田君は平成30年7月26日から27日に千葉県の幕張メッセにて行われた第36回日本受精着床学会総会・学術講演会において、「子宮内膜症と上皮間葉転換の関連の解明および上皮間葉転換阻害薬のもつ新規子宮内膜症治療薬としての可能性の検討」という演題で発表し、世界体外受精会議記念賞を受賞した。日本受精着床学会は、当教室の教授であった飯塚理八先生が発起人代表として1982年に発足した、生殖補助医療の向上を目的とした学会である。不妊治療に携わる産婦人科医、泌尿器科医、胚培養士および生殖生物学の研究者を中心としたとした学会であり、総会・学術講演会への参加者は今回、1,400人を超えた。本賞はかつてこの学会が世界体外受精会議を同時主催した際に設立された記念基金によって、本邦の生殖医学・医療の発展に寄与しうる優れた学術集会報告を表彰するために設けられた比較的歴史の長い賞である。

 升田君の研究対象である子宮内膜症(内膜症)は、エストロゲン依存性に増悪する治療困難な疾患である。既存の治療は、排卵を阻止することでエストロゲンの分泌を止める内分泌薬物療法と、生殖器官を標的とした手術療法とで構成されている。一方、皮肉なことに内膜症は生殖年齢で発症し不妊症を併発するが、内膜症治療と生殖医療が相反するジレンマの関係にあって、不妊患者にとっては非常にやっかいな疾患である。そこで升田君は、排卵を止めることなく内膜症の発症や進展を押さえる、非内分泌的薬物療法の確立を目指した。

 内膜症は、良性疾患にもかかわらず浸潤や転移を起こす。そのため、癌の浸潤や転移と同様に上皮間葉転換(EMT)を介した機序が予想される。升田君は、当初より本塾の先端医科学研究所遺伝子制御部門の佐谷秀行教授との共同研究として、いち早くこのEMTと内膜症の関連の解明に努め、2017年には内膜症各組織におけるEMT状態を証明し報告した(2017, Acta Obstet Gynecol Scand)。今回は、内膜症の各病態においてEMT状態が異なることを証明した上で、EMT阻害薬が内膜細胞の浸潤能を抑制することを明らかとしており、EMT阻害薬の内膜症治療薬としてのポテンシャルをより現実的なものへと導いていることが評価され受賞に至った。この研究は、内膜症の基礎的な解明のみならず、臨床応用(治療)に直結したトランスレーショナルリサーチであり、今後の発展した続報が大いに期待される。
(73期 内田 浩 記)

2018.5.13

村上 功君(82期)が第70回日本産科婦人科学会学術講演会でJSOG Congress Encouragement Awardを受賞

村上 功君(82期)が第70回日本産科婦人科学会学術講演会でJSOG Congress Encouragement Awardを受賞 平成30年5月10日から13日にかけて仙台で開催された第70回日本産科婦人科学会学術講演会にて、村上 功君(82期)がJSOG Congress Encouragement Awardを受賞した。同賞はレフリーの評価が高い演題で構成されるInternational Workshop演題の中から、発表における評価が特に高い演者に授与される賞である。
 村上君の演題は「HPV E1 is dispensable for low and high-risk HPV maintenance and latent replication in keratinocytes but is necessary for genome amplification」で、Low-risk HPVとHigh-risk HPVの生活環をE1に注目し実験を行った研究内容であり、今までにない手法で解析した画期的な研究である。HPVの複製は初期遺伝子の一つであるE1の発現が必須であるとされてきた。しかし同君が作製した細胞と確立した手法を用いて、HPVはE1非依存性の複製から依存性の複製に宿主細胞の分化に伴い移行していることが明らかになった。またLow-risk HPVとHigh-risk HPVは、元来考えられていたタンパク質の機能に差があるのではなく、遺伝子発現に差があることを明らかにした。
 村上君は、臨床・研究の両面でHPVによる発がん機構の解明に取り組んでいる。本研究は同君がUniversity of Cambridgeに留学した際の成果と、慶応義塾大学産婦人科学教室で行った研究の成果である。今後も留学先の研究室と様々な面で連携しHPV研究を進めていくことが期待される。同君の益々の活躍と研究のさらなる展開に期待したい。
(74期 岩田 卓 記)

2018.5.13

木須伊織君(83期)が第70回日本産科婦人科学会学術講演会で優秀日本語演題賞を受賞
非ヒト霊長類動物における子宮移植後の妊娠に世界で初めて成功!

木須伊織君(83期)が第70回日本産科婦人科学会学術講演会で優秀日本語演題賞を受賞  平成30年5月10日から13日に仙台市で開催された第70回日本産科婦人科学会学術講演会において木須伊織君が優秀日本語演題賞を受賞した。
 発表演題は、「非ヒト霊長類動物を用いた子宮同種移植における血管吻合の検討―脳死ドナー想定実験モデルの作製」である。同君は霊長類であるカニクイザルを用いて継続的に子宮移植の基礎実験を行っているが、これまでに非ヒト霊長類動物における安定した子宮同種移植モデルは存在しなかった。同君は3キロの大変体格の小さいカニクイザルにおいて、手術手技を工夫することで安定した子宮同種移植モデルの作製を行い、さらには世界で初めて非ヒト霊長類動物における子宮同種移植後の妊娠に成功し、その業績が評価され今回の受賞に至った。

木須伊織君(83期)が第70回日本産科婦人科学会学術講演会で優秀日本語演題賞を受賞 同君は子宮移植の臨床応用を目指すため、非ヒト霊長類動物であるカニクイザルを用いて子宮移植実験を行ってきた。慶應大学医学部キャンパス内ではカニクイザルの飼育、手術や管理は行えないため、滋賀医科大学の動物実験センターまで幾度も足を運び、実験をこれまで継続的に行うことができているのは同君の努力の結晶ともいえる。また、カニクイザルを用いた侵襲の高い複雑な手術、術中術後管理、免疫抑制剤のコントロールなどはヒトと異なり、非常に困難を極める。それにも関わらず、同君はそれらの課題を一つずつ解決しながら、これまで本研究を飛躍的に進め、今回の受賞は同君のこれまでの苦労や多くの業績が高く評価された。また、これまで慶應外科の先生方を中心に多岐に渡る領域の先生方と協力しながら研究を進めており、日本チームの基礎実験の業績は国際的に最も高く評価されている。
 本研究により近い将来、我が国における子宮移植の臨床応用も十分に考えられ、子宮性不妊女性に大きな福音をもたらすことが期待され、今後も同君の我が国における子宮移植の臨床応用へ向けた取り組みに注目したい。

木須伊織君(83期)が第70回日本産科婦人科学会学術講演会で優秀日本語演題賞を受賞
(71期 阪埜浩司 記)