生殖生理研究室

代表:
浜谷 敏生 講師(Toshio Hamatani, M.D. Ph.D.)
生殖生理研究室は、一般不妊治療から体外受精をはじめとする生殖補助医療まで、体系的に学ぶ研究室です。当研究室で学ぶひとりひとりが将来、大学病院・関連病院で一から殖補助医療を立ち上げる、あるいは支えていくことのできる人材を育成することを目標にしています。最新知識をアップデートしながら自分で考える力を養い、病態を理解し、治療方針についてきちんと自らの言葉で説明できるよう不断のトレーニングを重ねた結果として、産婦人科専門医取得後には、学位や、あるいは生殖医療専門医の取得が自然とできるようになっているはずです。

生殖生理研究室での臨床

i-vについて、専門領域を超えて横断的に取り組んでいます。

  • i. 一般不妊症例に対しての診断、エビデンスに基づいたストラテジックな治療(タイミング療法、人工授精、体外受精、顕微授精、胚移植)
  • ii. 若年癌女性に対する妊孕能温存と不妊治療
  • ii-1. 子宮頸癌IA1の一部~IB1(腫瘍径2cm以下)に施行される広汎性子宮頸管摘出術の術後挙児希望に対する不妊治療
  • ii-2. 子宮内膜異型増殖症・子宮体癌IA(G1、筋層浸潤なし)に施行される子宮温存治療後MPA療法および子宮内膜掻爬術後の挙児希望に対する不妊治療:MPA療法後は比較的良好な妊娠率が得られたものの、子宮内膜掻爬術を頻回に施行した症例では子宮内膜が菲薄化し、妊娠率が低下する。

    生殖生理研究室での臨床

  • ii-3. 乳癌・血液腫瘍疾患などの若年女性患者に施行される化学療法に対する妊孕能温存
  • ii-4. 卵子、卵巣皮質凍結・融解の標準化と卵胞賦活法の導入
  • ii-5. 悪性腫瘍症例に対する妊孕性温存治療のための未婚女性の卵子、卵巣凍結および男性の精子凍結
  • iii. 泌尿器科と共同での重度男性不妊症例に対するMD-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)および採取された精子を用いた顕微授精
  • iv. HIV serodiscordantカップルに対するHIV感染予防を目的とした、洗浄精液を用いた体外受精
  • v. 不妊症カップルの意識調査

生殖生理研究室での研究

1978年にルイーズ・ブラウン嬢が世界ではじめて体外受精(生殖補助医療技術)で誕生しましたが、生殖補助医療はヒトで成功して40年弱の比較的新しい学問であり、まさに日進月歩で革新されています。そのため、エビデンスの更新は不可欠です。言い方を変えれば、まだわかっていないことのフィールドは広く残されています。私たちは卵子や受精卵について臨床現場で遭遇して芽生える『なぜ?』を解き明かすべく、着床前期におけるグローバルなDNA脱メチル化とこれに伴う遺伝子発現変化のメカニズムから、全能性獲得メカニズムまで明らかにすることを目指します。これはいわばヒトの成り立ちのはじまりの謎を解き明かすことに等しいと考えています。ここで得られる知見は、不妊治療のみならず、より良い幹細胞の樹立という観点から、再生医療にも貢献できると考えています。研究に専念する大学院進学も可能です。

1)受精卵はなぜすべての組織に分化できるのか?
受精卵には個体に発生することができる”全能性”という特徴があります。しかし卵に含まれるどの因子が全能性を司っているかはいまだわからないままです。ここでは、着床前期胚におけるメチル化と遺伝子発現制御メカニズムに着目し、全能性獲得メカニズムを明らかにします。さらに、in vitroでのモデルとして、受精卵から樹立され、多分化能性を有するES細胞と、転写因子により樹立され、ES細胞と同じような多分化能性を有するiPS細胞を比較し、より良い初期化方法を探索します。

  • 1.1 着床前期胚に発現する新規遺伝子によるインプリンティング遺伝子制御領域DMRのDNAメチル化維持機構の解明

    着床前期胚に発現する新規遺伝子によるインプリンティング遺伝子制御領域DMRのDNAメチル化維持機構の解明

  • 1.2 着床前期胚の遺伝子発現制御機構の解明

    着床前期胚の遺伝子発現制御機構の解明

  • 1.3 卵子の加齢機序の解明

    卵子の加齢機序の解明

  • 1.4 リプログラミングと再生医療:初期胚発生型リプログラミングを介して樹立されるES細胞と転写因子によるリプログラミングを介して樹立されるiPS細胞の安全性の比較

2) 卵・着床前期胚および子宮内着床環境の質的評価法の開発
臨床の現場では、受精卵の良し悪しは形態的な評価のみに依って行われているのが現実です。卵胞成熟から着床に至るまでの発生を継時的に観察し、タンパク、低分子タンパク、miRNAの組織間でのやり取り(クロストーク)を明らかにします。ここで得られる知見は、培養液の改善や新しい質的評価法の開発につながると期待されます。

  • 2.1 卵胞成熟、精子、初期胚発生、着床における卵子、初期胚と卵管、子宮内膜とのクロストークの解明:卵、精子、着床前期胚、あるいは胚盤胞から放出される分泌顆粒(exosome)に含まれるmiRNA解析、タンパクの網羅的解析

    卵胞成熟、精子、初期胚発生、着床における卵子、初期胚と卵管、子宮内膜とのクロストークの解明:卵、精子、着床前期胚、あるいは胚盤胞から放出される分泌顆粒(exosome)に含まれるmiRNA解析、タンパクの網羅的解析

  • 2.2 初期胚の代謝機構に基づいた培養液の改善と新規バイオマーカーの探索:着床前期胚のメタボローム解析
  • 2.3 子宮内膜炎の評価法開発

おわりに

こうした研究は、産婦人科関連疾患の病態解明のみならず、新しい治療法やより安全な体外受精技術の開発につながると考えています。ぜひ私たちと一緒に日本の、そして世界の産婦人科学のパイオニアとしての一翼を担いましょう。

【References】
英文業績