研究

生殖内分泌研究室

代表:内田 浩 講師(Uchida Hiroshi, M.D. Ph.D.)

私達の研究室は、産婦人科学の根本である生殖内分泌学・生殖生理学を基盤として、以下に挙げるように、生殖を中心に周産期・腫瘍・女性医学のあらゆる分野に亘って研究を展開しています。今後もこれまでの研究を発展させながら、産婦人科関連疾患の病態解明と新しい産婦人科医療の開発と確立を目指します。

1.雌性生殖器官における幹細胞の同定とその生理学的・病理学的役割の解明

子宮内膜や子宮平滑筋などから幹細胞を分離・同定し、独自に開発した子宮内膜再生・子宮内膜症モデル等を用いて機能解析を行ってきました。新しい内膜再生機序や子宮内膜症幹細胞仮説を提案するとともに、子宮筋腫の病因に幹細胞とWNT/βカテニン経路が関与することを示すなど、幹細胞の役割および生理学的・病理学的意義を明らかにしました。

雌性生殖器官における幹細胞の同定とその生理学的・病理学的役割の解明


2. 組織工学と幹細胞を用いた子宮の再生・再建の基盤研究

子宮欠損に対する新しい生殖医療の基盤技術として、脱細胞化・再細胞化技術を用いて子宮の再生・再建をラットで成功しました。

組織工学と幹細胞を用いた子宮の再生・再建の基盤研究


3. 着床・脱落膜化など子宮内膜機能を担う細胞分子生物学的機序の解明

着床や妊娠の維持に必須である子宮内膜細胞の分化や運動に、SRCキナーゼ、ヒストンアセチル化、レドックス反応が関与することを示し、着床機序や着床不全治療について新しいパラダイムを提案しました。UDP糖の関与する内膜免疫防御機構の存在も初めて示しました。

着床・脱落膜化など子宮内膜機能を担う細胞分子生物学的機序の解明


4. 不妊症を含めた生殖内分泌疾患の分子遺伝学的機序の解明とその臨床

早発卵巣不全(早発閉経)の実態解明を通じた新しい治療・管理法の提示、FSH産生下垂体腺腫の臨床像の推移とその分子生物学的背景の報告、原発無月経へのTACR3複合ヘテロ変異の関与を世界に先駆けて報告するなど、不妊症などを呈する様々な雌性生殖内分泌疾患の分子遺伝学的機序を、単独あるいは国立成育医療センター等との共同研究で明らかにしました。

不妊症を含めた生殖内分泌疾患の分子遺伝学的機序の解明とその臨床


5. 流産を反復する不育症(習慣流産)の基礎と臨床

妊娠免疫の破綻が流産であるとして、その病因を免疫学的側面から解明しました。不育症における染色体異常の実態や影響、患者の抱える精神心理学的問題点、子宮奇形の治療成績などを、共同研究などにより明らかにしました。

流産を反復する不育症(習慣流産)の基礎と臨床


6. 生殖現象および産婦人科疾患におけるエピジェネティクス制御の解明
— ブロモドメイン蛋白BRD4を中心に —

丸山らが留学中に行った米国NIHでのBRD4の発見とそのエピジェネティックスにおける役割の解明に始まる一連の研究に基づき、帰国後は卵発育・胚発生でのBRD4の挙動を解明し、卵のエピジェネティクス制御にBRD4 が関与する可能性を示しました。現在BRD4 は、子宮頸癌の起因ウイルスであるHPVの転写を制御するのみならず、基本的且つ様々な生命現象に深く関与することが明らかになってきており、その阻害剤は有望な抗がん剤として注目されています(Filippakopoulos, P. et al., Nature, 2010; Delmore, J. E. et al., Cell, 2011; Shi J and Vakoc CR, Mol Cell, 2014)。

生殖現象および産婦人科疾患におけるエピジェネティクス制御の解明


7. 胎盤における薬剤輸送などを担う分子メカニズムの解明

胎盤機能におけるメラトニンの役割の一端を解明したことに加えて、慶應義塾大薬学部が主導する、胎盤の薬剤輸送を担う分子の同定とその機序の解明プロジェクトに、共同研究ベースで参画しています。

胎盤における薬剤輸送などを担う分子メカニズムの解明


【References】

【英文論文(抜粋)】*責任著者, IF: impact factor(PDF)




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